第8話

私達は控室を出た。


「何?渉さん」


「俺達家族になって十年だよな・・・」

「うん」

「渉さんは他人行儀だから…出来れば、お義兄ちゃんと呼んで欲しいんだけど…ダメか?佑月」

「それは・・・」


「俺とお前は血が繋がらない。でも、俺はお前を妹として認めて、接して来たつもりだ」


「・・・」


分かってる。分かってる。


渉さんはいつでも私に優しくて可愛がってくれた。


でも…私は・・・



「ゴメンなさい…渉さん。私は貴方をお義兄ちゃんとは呼べない」



「佑月」

今日で彼の想いは断ち切ろうと思ったけど。


他の皆のように二人の門出を祝福できなかった。

私は彼に未練を残していたから。

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