第95話
頃合を見計らって靴箱に移動した右京は、一年生の靴箱の側面に背中を預けてもたれかかる。
どんなに美紅に嫌われようとも、こんな薄暗い時間帯に一人で帰らせるなんて危ないことは、絶対にしたくなかったから。
過ぎ行く女子生徒のちらちらとした視線を感じつつ、それらを全てスルーしてひたすらに美紅だけを待つ。
……最近になって、自分は美紅のストーカーか何かではないかという気がしてならなくなり、彼女に気持ち悪がられないように、絡みに行く頻度に気を遣っていたのだが。
まさか、ここまで一気に美紅との距離が開いてしまうとは思ってもみなくて、
(これは……思ってた以上にキツいな)
右京の精神はなかなかに削られていた。
美紅に振られるのは分かりきっていることなので、それはいい。
だが――
“好きだ”と伝えた後、美紅に拒絶されてしまったら、今度こそ今までのように一緒の時間を過ごすことは出来なくなってしまうだろうから。
(それならいっそ、ずっとこのままの方が……)
せめて、彼女の友達くらいにはなりたいが、もう多くは望まない。
美紅の傍にいられるのなら、もうそれだけで……
「……まだ帰ってなかったんですか」
ムッとしたような声に顔を上げると、そこには迷惑そうな顔をした美紅がいた。
「終わったか?」
美紅の声には答えず、靴箱の壁から背中を離して、彼女にそっと歩み寄る。
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