第94話

その背中を、酷く傷付いた表情で眺めていた右京は、



「しっかりと振られたけど、これで満足したか?」



隣で唖然としている天野をじろりと見た。



「えっ、フラれ……えっ!?」



天野は一瞬たじろいだが、



「いやいやいや! 先輩、間宮のこと好きだなんて一言も伝えてないじゃないですか!」



冷静になり、大慌てでツッコミを入れた。



「ちゃんと好きを伝えてないのに、あんな言い方したら怒られて当然ですって!」



美紅からしてみれば、川上のようなセフレにしてやると言われたも同然の出来事で。



「間宮のこと、追いかけて下さい」



「生徒会の会議を抜けてきたんだから、そろそろ時間切れだろ。終わるまで待つ」



辛そうな顔を天野から隠すようにして、右京は下を向いて宿題を始めた。



「本当にもう……しっかりして下さいよ」



天野はもう自分に出来ることはないと判断して、椅子から立ち上がると静かに図書室を出ていった。



それを目で追うこともせず、教科書とノートを見つめていた右京は、



「はぁ……」



傷付いた瞬間には吐き出せなかった溜息を、今になってこっそりと吐き出した。

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