第93話

「今は、そういうのは誰もいない」



右京はとりあえず正直に告げ、



(なるほど……川上先輩とはやっぱり付き合ってた時期もあったのか)



天野は何も言わなかったが、心の中でふむふむと頷いた。



「……だからって、彼氏でもないのにこうして待たれるのは違うと思います」



美紅は、自分たちの関係が何なのかをはっきりさせたくて、勇気を振り絞って右京に言葉をぶつける。



「……じゃあ、付き合うか?」



右京がぽつりと零した言葉に、



「えっ?」



「おぉっ!?」



美紅と天野が同時に声を出した。



「右京先輩って、同じ学校の人とは付き合わない主義なんでしょ?」



だから川上は編入していったのに、とは流石に言わないけれど。



「何事にも、例外ってのは付きもんだろ?」



余裕げにニヤリと笑う右京の顔は、もう既にマスクが外されていて、痣も綺麗に治っている。



その美しく整った顔を、美紅は鋭く睨みつけ、



「……っ、勝手に私を“例外”とやらに入れないで下さい!」



吐き捨てるようにそう言うと、早足で図書室から出ていってしまった。

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