第87話

それはいつものことなのに、



(よくよく考えたら、付き合ってもいないのにコレっておかしいよね!?)



そんなことを心の中で叫びながらも、やはり緊張して体を震わせる美紅に、右京は当然のように気付いていたが、



「……」



最低だとは自覚しつつも気付かないフリをして、彼女の体を思い切り抱き締め続けた。



もう川上とは完全に別れているし、今の右京を縛り付けるものは何もない。



美紅がどうせ自分のものにならないのなら……せめてこの時間だけは、誰にも邪魔をされることなく彼女を独り占めしたいと思ったから。



満員電車のぎゅうぎゅう詰めに密かに感謝をしつつ、



(やっぱり、俺は美紅が好きだ……)



心の中だけで美紅へと告白をしたが、それは当然、誰の耳にも届かない――

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