第79話

今まで、美紅と親しくなりたいという男がこうして接触してくることが多かった武巳にとって、これはよくあること。



右京が自分に会いに来たのも、そういうことなんじゃないかな……と勝手に推測した武巳は、そんなに深く考えずに構えていた。



いつも通り、“仲を取り持つことは出来ない”と伝えるだけでいいと思っていた。



だから、



「美紅の噂は全くの嘘なので、他の人から何を聞いても絶対に信じないで下さい」



二人して適当に入ったファミレスの席で懇願するように頭を下げた右京に、



「えっ?」



想定外が過ぎた武巳は、驚いて間抜けな声を出すことしか出来なかった。



「美紅は誰とも付き合ってません」



右京は更に念押しした。



「……君は? 噂されてる張本人の一人だよね?」



「そうです。でも……俺が一方的に美紅にちょっかいをかけているだけなので」



「……」



明らかに美紅への想いが人とは違う右京を見ていて、武巳は考え込むようにして黙る。



「だから、本当に美紅は俺とは何もないので」



「……うん。それは知ってるんだけど、君は? 美紅に対して“何もなさそう”には全然見えないけど」



右京の考えが読めなくて少し苛立ったような声を出してしまった武巳は、自らを落ち着かせるために、一度小さく息を吐いた。



「美紅が俺のことを好きなのは、ずっと前から知ってる」



そして、挑発的な笑みを浮かべてみせた。

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