第79話
今まで、美紅と親しくなりたいという男がこうして接触してくることが多かった武巳にとって、これはよくあること。
右京が自分に会いに来たのも、そういうことなんじゃないかな……と勝手に推測した武巳は、そんなに深く考えずに構えていた。
いつも通り、“仲を取り持つことは出来ない”と伝えるだけでいいと思っていた。
だから、
「美紅の噂は全くの嘘なので、他の人から何を聞いても絶対に信じないで下さい」
二人して適当に入ったファミレスの席で懇願するように頭を下げた右京に、
「えっ?」
想定外が過ぎた武巳は、驚いて間抜けな声を出すことしか出来なかった。
「美紅は誰とも付き合ってません」
右京は更に念押しした。
「……君は? 噂されてる張本人の一人だよね?」
「そうです。でも……俺が一方的に美紅にちょっかいをかけているだけなので」
「……」
明らかに美紅への想いが人とは違う右京を見ていて、武巳は考え込むようにして黙る。
「だから、本当に美紅は俺とは何もないので」
「……うん。それは知ってるんだけど、君は? 美紅に対して“何もなさそう”には全然見えないけど」
右京の考えが読めなくて少し苛立ったような声を出してしまった武巳は、自らを落ち着かせるために、一度小さく息を吐いた。
「美紅が俺のことを好きなのは、ずっと前から知ってる」
そして、挑発的な笑みを浮かべてみせた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます