第78話

右京はお洒落な雰囲気のガラス張りの店内を、外からそっと覗く。



美紅の想い人がどんな人なのかは右京も見たことがあるので、店内で掃き掃除をしているとんでもないイケメンがその彼であると、右京はすぐに気が付いた。



勢いで来てしまったものの、どうすればいいのか分からず固まっていると、



「えっと……ご予約様ですか?」



床の掃き掃除を中断させた武巳が、店の扉を開けて右京に声をかけてきた。



「いや、あの……」



戸惑う右京を、失礼のない程度に観察した武巳は、



「もしかして、美紅のお友達?」



右京が檸檬高校の制服を着ていることと、恐ろしい程に整った美しい顔をしていることから推測して、



(美紅の“噂の彼氏”かな)



そう直感した。



「えっと……はい」



右京はとりあえず頷きながらも、自分は美紅にとって何なのだろうかと改めて考える。



恋人未満どころか、友達未満であることに今更ながらに気付かされて、思わず俯いた。



そんな右京をひたすら観察していた武巳は、



「俺、今日はもう少ししたら上がりなんだけど……少し待っててくれるなら、どこかで話す?」



右京に対して、そんな助け舟。



「美紅のことで、俺に何か話したいんだよね?」

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