第67話
右京は美紅と別れた後、帰りの電車に一人で揺られながら、スマホの画面を見つめていた。
表示されているのは、川上のトークルーム。
『今日も会える?』
昼間に届いたそんなメッセージに返事しないまま、今に至る。
「はぁ……」
胃がズンと重く痛くなり、思わず溜息が零れる。
そんな右京を、同じ車両に乗り合わせた他校の女子生徒が、キャイキャイと騒ぎながら恋する瞳で見つめてくる。
視線を感じてちらりとそちらを見ると、キャーッと更に騒ぎ出す。
「檸檬高の右京先輩だ!」
「マスク付けててもカッコイイ!」
嫌でも聞こえてくる黄色い声に、
「はぁ……」
右京はまた溜息をついた。
右京を目の前にした女の子は、彼女たちのような反応をするのが普通なのだ。
右京が少し近付いただけで迷惑そうな顔をする美紅が、変わっているというだけで。
(美紅……)
どうしてだか放っておけない彼女のことが、凄く気になる。
駅を出てから無事に家に着いたかとか、体調はどうなのかとか。
彼女と離れた途端に不安で落ち着かなくなり、ちょっと気を抜けばすぐにメッセージを送信してしまいそうになる。
彼女がそんなつもりで連絡先を交換したわけではないと重々承知なので、なんとか理性で思いとどまるが。
これがつまり、“好き”ということなのだと自覚すればする程、
(やっぱり、川上にはきちんと話をしないとな)
これ以上、川上と関わることはやめたいと思う。
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