第63話

――その日の放課後。



いつものように右京と一緒に、学校から最寄りの駅までの道を二人で並んで歩く。



一緒に帰るのが当たり前のようになってしまっていて、今まで聞くのを忘れていたのだが、



「そういえば、右京先輩って部活とかしてないんですか?」



「美紅が生徒会に入ってるって聞いて、俺も入ろうとしたんだけどな。あと数ヶ月で引退なのに、今更何の役に立てるんだって入れてもらえなかった」



マスクをつけた右京の悔しそうな顔が何だかおかしくて笑えるが、つまり彼は三年間帰宅部なのだろう。



――どうして、私が入ってるからなんですか?



そう訊ねたいけれど、出来ない。



なんとなく、聞いてはいけないような気がするから。



「美紅が俺のことを質問してくるなんて、珍しいな」



そんな声に、俯けていた顔を上げると、嬉しそうな顔をした右京と目が合う。



「あ……」



なんとなく居たたまれなくなって、また慌てて俯いた。



何故か、顔が熱い気がする。



「可愛いな、美紅は」



「……っ」



――武巳に言われた時は、胸にズキンとくる痛みに近い苦しさなのに。



それが何故か右京に言われると、胸の奥がキュンと疼くような、息苦しさにも似た感覚に陥る。



同じ言葉を言われているのに、この違いは何なのかが全く分からなくて、美紅は戸惑ってしまった。

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