第62話

メッセージの内容は、いつも通り『時間があったらまた練習に付き合って欲しい』というもので。



右京が自分をとても大切にしてくれているのを実感している美紅は、ついそんな右京と彼を比べてしまい、



(武巳にとって、私って何なんだろ……)



改めて、そんなことを考えてしまった。



とりあえず都合のいい日を武巳にメッセージで伝えて、美紅はふぅ、と息をつく。



常日頃から、美紅を思いっ切りメイクさせてみたいと言っている武巳。



“元が可愛いから”なんて好きな人から言われたら、普通は嬉しくなるはずなのに。



武巳から“可愛い”と言われる度に、美紅は何故だかそれがとても苦しく感じる。



もし、メイクやお洒落を頑張って自分なりに可愛いと納得出来ている状態で、彼からその言葉をもらえたとしたら……



その時は、心から嬉しいと思えるようになるのだろうか。



(少しくらい、メイクの勉強もしてみようかな)



そう決心した美紅は、スマホでコスメについて調べ始めた。



初めてのメイクで、しかもアルバイトをせずに親からもらえるお小遣いで生きている美紅には、ドラッグストアのコスメで精一杯だけれど。



それでも、キラキラと輝いて見えるコスメの写真を見ていると、憧れの武巳と少しくらいは釣り合えるようになるんじゃないかと……



そんな淡い期待と夢を抱いた。

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