理想像
第48話
日が暮れてから川上の家を出た右京は、そこかしこが痛む体を引きずりながら帰路についた。
電車やバスに乗る時など、人目につく場所では顔の痣を隠すために保健室でもらった使い捨てのマスクをつけて。
いつもよりも時間をかけてなんとか帰宅した右京を玄関で待ち構えていたのは、
「もう、右京! そんな大怪我してるのにこんな時間までほっつき歩いて、一体どこで何してたのよ!」
今は夕食の準備のために後ろで一つにまとめられているが、右京と同じ墨を流したかのような艶やかな黒髪を背中まで伸ばし、その真っ直ぐに下りた前髪の隙間からは宝石のように
右京の母である彼女は、確かにある程度歳は取っているが、流石は右京の母なだけあり、誰もが振り返る美人。
母は、父から右京の怪我のことを事前に聞いていたらしく、酷く青ざめた表情で、
「どこが痛いの? 病院行く?」
と、
「いっ、て……大丈夫だから触るな」
反抗期真っ只中の息子は、そんな母を冷たく突き放し、靴を脱いで玄関を上がる。
「お前な……先に謝ることが山ほどあるだろ」
廊下を突き進む右京の前に、右京と変わらないくらいの長身の男が立ちはだかった。
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