第47話

「……お前の差し金か」



右京が鋭く睨み付けると、川上はふふっと無邪気に微笑む。



「彼ね、私のことが大好きなんだって。片想いする辛さは私が一番よく分かってるから、寄り添ってあげてるの」



右京は今朝、教室に着くなり、右京のクラスで待ち構えていたそいつに、いきなり殴りかかられた。



不意をつかれた右京は机をなぎ倒しながら倒れ込み、そこへ続けざまに腹に何発かの蹴りを食らった。



右京が完全無抵抗で殴られっぱなしだったのをその場にいた全員が見ていたので、右京には何の処分も罰もないが、相手の男は停学は免れないだろう。



右京の唇の傷から、体の痣へと指先を滑らせる川上は、なんだか機嫌が良さそうで。



目の前で妖艶に微笑む川上も、川上にいいように利用されているその男も、そして自分も、



「……狂ってやがる」



全てがそう思えてしまって、右京はそんな一言を苦々しげに吐き出した。

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