第46話

「ねぇ。これ、痛い?」



不意に川上が右京の左頬に触れ、



「……っ」



右京の顔が、苦痛に歪む。



「前歯の一本でも折れてくれてたら、右京くんのことを狙う女も少しは減るのかな?」



「……」



右京の中で、なんとなく心の片隅で疑っていたことが、川上の一言で確信へと変わっていく。



「この顔、右京くんが子はもう見たの?」



「……あぁ」



「イケメンが台無しになったって、幻滅してた?」



言われて、今朝の保健室でのやり取りを思い出す。



『おおぅ……国宝級イケメンの顔が台無し……』



そう呟いたのは、の友人。



肝心の彼女は――



……潤んだ瞳と、小刻みに震えた小さな体がやけに強く印象に残っている。



「……さぁな。元々、俺の顔なんか興味の欠片もなさそうだったからな」



……そう。



右京にとって唯一の取り柄とも言えるべきこの顔に、彼女は全く惹かれてくれないから。



「……じゃあ、には無駄なことさせちゃったかしら? 私のお願いなら何でも叶えてくれるって言うから、お願いしたのに」



「……」



何を、と聞かなくても、右京の傷に触れてくる川上の顔を見ていれば分かる。

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