第43話
「右京くん、好き。大好き」
放課後、川上と待ち合わせをした右京は、そのまま腕を引かれるようにして、彼女の部屋に上がり込んでいた。
今日は遅くまで家族は帰って来ないから、という川上の自宅にこうして連れ込まれるのは、今日が初めてではない。
川上に誘われるままに彼女を抱き、行為を終えてからもベッドの中で甘えたように擦り寄ってくる彼女を優しく抱き締めてやる。
「右京くんは? 私のこと、好き?」
「……ん」
上目遣いで見上げてくる彼女の問いに、右京は答えを濁しながら彼女の髪を撫でた。
……美紅のサラサラとした滑らかな髪とは違い、指に引っ掛かってくる川上のその感触に、右京は密かに眉をひそめる。
川上のことは、可愛いとは思う。
将来の夢を叶えるべく並々ならぬ努力をして、倍率の高い檸檬高校への入学を果たしたはずなのに、右京と付き合いたいがためにそれらを捨てて、他校へと編入までしてしまったのだから。
そんなことをしてまで自分を想ってくれる川上を、実は心根が優し過ぎる右京は突き放すことが出来なかった。
毎日、色んな女の子から代わる代わる告白されていた右京は、
――本当は、ずっと前から好きな人がいる、と突き放すことが出来なくて。
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