第40話
元から男っぽさと若干のガラの悪さを併せ持つ天野が不機嫌そうなのを、瞬時に察したクラスメイトたちはヒソヒソ声をやめて押し黙り、
「えっ?」
天野は戸惑う美紅の眼前までズカズカとやってきて、彼女の机の上にあった鞄を、自分の鞄をかけた左肩とは反対の右肩に担ぐ。
「朝から何か腹痛ぇから、保健室付き合え!」
そして、そのまま美紅の腕を掴み、
「えっ?」
状況が掴めない美紅をズルズルと引きずりながら、二人して教室から出ていった。
「保健室行くのに、鞄要る……?」
その場にいた全員が思っていた疑問を、教室内にいた男子の一人が皆を代表してぼそりと呟いた。
そんな声など全く届いていない天野は、保健室に向かう道中で美紅に質問攻めをしていた。
今流れている意味の分からん噂は何なのか、と。
昨日の出来事を簡単に説明した美紅は、今にも泣き出しそうな程に弱っていて……
「センセー! 一年一組、天野と間宮、腹痛いんで早退しまーす!」
保健室の扉を開けると同時にそんなことを大声で告げて、
「美紅はともかく、天野は大丈夫じゃないか?」
この学校の養護教諭は女性のはずだが、聞こえてきたのは少し低めの、耳に心地良く響く男子の声。
「……あり?」
天野は間抜けな声を出し、美紅は恐る恐る顔を上げて――
目の前には、椅子に座って養護教諭に顔の傷の手当てをしてもらっている最中の右京がいた。
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