第39話

机の上に鞄を置いたまま、美紅は俯いて膝の上で制服のスカートごと握り締めた両手の拳を見つめた。



……大丈夫。



こんなことは小学生の頃からよくあったし、もう慣れている。



当初は耐え切れずに泣きながら教室を飛び出したけれど、今は耐性がついているから。



何より、特待生として入学した身分で、こんなことを理由に早退なんてしていいわけがない。



美紅の両親が、自分たちの夢を叶えて開いたお店が、最近になって二ツ星を獲得して更に有名になりつつあるのに。



両親に余計な心配はかけたくなかった。



美紅の両親は、『店の跡継ぎのことは気にせず、自分の進みたい道を選んでいいよ』と常日頃から言ってくれている。



美紅のために、今まで学費の貯金も頑張ってきたからお金の心配も要らないとも言われていて。



けれど、美紅の高校入試の合格通知後に届いた特待生制度の案内を見て、美紅はこれで両親の負担が減らせると嬉しくなった。



だから、興味のあった部活動への入部も諦めて、三年間を特待生として過ごせるように勉強に明け暮れようとしているのに。



この教室から、学校から逃げ出したいだなんて、そんなこと、考えてはいけないのに……



「間宮ぁ! ちょっとこっち来いやぁ!」



突然、教室の扉を勢いよくバンッと開けた天野が、扉の所から美紅を大声で呼んだ。

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