第25話
「……何を、買収されたの?」
嫌な予感がして、美紅の首筋を嫌な汗が伝う。
「先輩が、間宮と2人でお昼食べたいって」
「……」
何だ、その顔に似合わない可愛い願望は。
しかも、
「え? それを焼きそばパンと引き換えに、私の意見は聞かずに勝手にオーケーしたの!?」
目立ちたくないと願っている美紅にとって、それはかなりマズい状況。
「焼きそばパンだけじゃなくて、メロンパンもだもん……」
きっとどちらも手に入れることが出来なかった天野の前で、右京が得意げに見せびらかしたのだろうことは想像がつく。
「一緒に来てもらうぞ、美紅」
美紅のランチバッグと水筒を勝手に取ってきた右京は、いつものように美紅の手首を掴む。
「ちょっ……」
美紅の小さな声を残して、右京は美紅をズルズルと引きずっていった。
そうして行き着いたのは、中庭。
大きな桜の木の下に設置されているベンチは空いていて、右京は美紅の手を引いたままそこに座った。
手を下に引かれて、美紅も渋々右京の隣に腰を下ろす。
青々と茂った桜の木の葉が太陽の光を遮ってくれて、そこを通り抜ける風も心地良く、もう初夏だというのにその場所は十分過ぎるほど涼しかった。
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