第17話

――翌朝。



学校へ行くために電車に乗ろうと、最寄り駅の改札口を通ると、



「美紅……」



そこには何故か、右京が立っていて。



「先輩? えっ、なんで……」



朝はいつも別々で登校しているし、乗っている電車もきっと違うはずなのに。



驚いたまま動きを止める美紅の目の前にツカツカとやってきた右京は、



「髪、どうした? いつもより凄く綺麗になってる」



美紅の長い髪に、指先でそっと触れる。



「触った感じも、いつもよりいいな」



その触れ方が、なんだか武巳の触れ方に似ている気がして、



「……っ」



美紅の体が、条件反射的にびくっと強ばった。



美紅の反応に気が付いた右京は、咄嗟とっさに彼女から手を離す。



「……行くぞ。電車に乗り遅れる」



そして、いつも通りに彼女の手首を掴むと、ホームへ続く階段の方へと引っ張った。



電車に乗ると、いつも下校時にしてくれるように、右京は美紅を他の乗客の圧から守ってくれる。



電車が大きく揺れる度に、右京が一瞬だけだが辛そうな顔をするのを見て、美紅の胸が痛む。



こうして間近で右京の顔を見上げていると、彼は本当に美しい顔をしているな、とイケメンすぎる武巳を見慣れている美紅ですら思う。



見た目だけで判断されることを嫌う美紅だからこそ、そんなことでトキめいたりはしないが。

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