第13話
右京と別れて、最寄り駅から自宅マンションを目指して、美紅は一人でとぼとぼと歩く。
途中、美紅の見慣れた美容室の扉が開き、
「あれ? 美紅、今帰り?」
客の見送りをしていたその店の男性美容師が、美紅に気付いて声をかけてきた。
ふわふわ癖毛の茶髪をお洒落に流し、ぱっちり二重の綺麗で大きな瞳を持った、誰の目から見てもイケメンなその美容師は、
「あ。
歳は美紅よりも5つ年上で、今年で21歳になる。
美紅にとっては幼なじみでもあり、彼女の父親と武巳の母親が
そして、この彼が――美紅の、初恋の相手でもある。
しかし、かなり薄いとはいえ、多少の血の繋がりがあるので、彼に気持ちを伝えたことはないが、それでも美紅は今もなお、武巳に片想い中なのである。
「相変わらず、すっげー美少女だな。遠くから見ててもオーラで分かるぞ」
美紅の気持ちに気付いていないのか、そんなことをさらりと言ってしまう武巳は、美紅の目には残酷に映る。
「美紅、今時間ある? 丁度お客さんも引いたところだし、ちょっと練習させて欲しいんだけど……」
武巳は今年の春、美容師の専門学校を卒業して今いる店で働き始めたばかりの、まだまだ見習いの身分。
そんな彼の練習台として、美紅は普段からよく協力している。
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