第12話

「うん?」



「あの……彼氏でもない人に毎日送ってもらうのは、何と言うかとても申し訳ないので……」



「……」



美紅の言葉を聞いて、右京の表情はあからさまに不機嫌そうなものへと変わる。



「だから……明日からはもう……」



美紅の語尾が段々と弱々しくなっていき、



「なるほど、分かった」



右京がムスッとしたまま、こくんと頷いた。



「美紅に彼氏が出来たら、その時はもう送るのはやめる」



「……はい?」



「彼氏が出来たら、俺が必要以上に美紅に近付くのはおかしいもんな?」



「えーっと……」



話がズレていて、右京の言っていることがよく分からない。



「で? 明日はその彼氏とやらが出来る予定なのか?」



「……」



何だ、彼氏が出来る予定って?



美紅はそう思ったが、言えるわけもなく、



「……いいえ」



正直に答えると、



「なら、明日もここまで送る」



右京は不機嫌そうな顔をやめ、嬉しそうにニッと笑った。

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