第11話
結局、右京の忘れ物とやらは借りていた本の返却のことで、それは彼の鞄の中に入れっぱなしだった。
まだ図書委員が誰も来ていなかったので、貸出期限内の本なら無人の状態でも返却出来るボックスの中へと本を返却して。
そうして2人で帰路につく。
満員電車と呼ぶ程ではないが、帰宅ラッシュ時間に差しかかり、そこそこ混雑している車内で、
「……」
「……」
特に会話もなく、美紅と右京は扉の前で立ったまま乗車していた。
美紅は扉に背をつけて、その向かいの右京はまるで美紅を壁ドンするかのような姿勢で立っている。
美紅が他の乗客の波に押しつぶされないように、また痴漢にあわないようにという配慮なのだと気が付いている美紅は、何故右京がそこまでしてくれるのかが分からずに戸惑う。
美紅の自宅の最寄り駅に到着してから2人して電車を降りて、車内にいる時とは打って変わって少し距離を置いて歩く右京。
改札口を出る手前まで美紅を送って、その後、彼はさっき乗ってきた電車とは反対方向の電車に乗って、来た道を戻っていく。
それを毎日してもらっているわけだが……
「先輩」
美紅は人通りの妨げにならないように改札口の傍の壁まで寄り、後ろを歩いていた右京を振り返った。
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