第3話

そして、極めつけは……



「美紅。電子辞書忘れたから貸してくれ」



サラサラの黒髪に、氷のように冷たい印象を与える黒目がちの瞳を持つ、見た目だけなら絶世の美男子と呼べるこの男。



今は一限目と二限目の間の休憩時間で、



右京うきょう先輩。そういうものは同学年で他のクラスのお友達に借りては?」



三年生であるはずの彼が、何故か一年生の美紅の机の横に立っていた。



大人しい性格の美紅は極力目立ちたくないのに、



「キャー! 右京先輩が来てる!」



この男が傍に来るだけで嫌という程に目立ってしまう。



「俺と美紅の仲だろ?」



「偶然同じ高校に通っているだけの先輩と後輩、という仲でしかないと認識しております」



「照れ隠しか?」



「プラス思考がぶっ飛びすぎてて怖いです」



何を言われても、美紅は照れることなど一切せずに淡々と返す。



それを、クラスメイトたちが羨ましそうに遠巻きに眺めている。



美紅の傍から離れないこの右京という男は、その見目の麗しさからさぞかしモテるだろうと思いきや……



人を寄せ付けぬオーラを放っているため、声をかけたくてもかけられない女子が沢山いる。



そんな目立ちまくり注目されまくりの男と関わりたくなどない美紅なのに、一体何を気に入られたのか、右京はしつこく美紅に絡んでくる。



これが、美紅の日常。



いい加減、そろそろ飽きて欲しいと切に願っている。

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