第8話

唇が優しく触れ合ったかと思うと、



「……んぅ……」



すぐに友季の舌が、舞の唇をこじ開けて入り込んでくる。



深く絡み合う熱はとろける程に熱くて、甘くて――



胸がキュンとうずく度に、その苦しさのせいか少し苦味を感じる。



しばらくしてから、友季がゆっくりと唇を離して――



「相変わらず、苦くて甘いな。舞の唇は」



幸せそうに目を細めて微笑わらった。



「どっちがよ」



舞がツンとそっぽを向く。



けれど、



「舞」



しびれる程に甘い声で呼ばれて、振り向かないわけにはいかず。



「……何?」



「来年のハロウィンも、それ着て」



友季の熱を帯びた目と目が合い、



「もう二度と着ない」



舞はまた慌ててそっぽを向いた。



「店のお菓子、好きなのを好きなだけ食べていいから」



そんな友季の必死な声に、



「……考えておかないこともない」



はっきりノーとは言えない自分がいて。

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