第6話

これでは、まるで……



「トモくんが、コックコートを着た悪魔に見えるー!」



舞は目に涙を浮かべてそう叫んだ。



「……へぇ。それはそれで面白そうだな」



友季の瞳が楽しそうに、でも妖しく細められる。



「舞」



呼ばれて、舞が友季の瞳を見つめると、



「Trick or Treat?」



舞の日本語英語とは違う、綺麗な発音でそう訊ねられて。



「あ……」



今、舞が手に持っているのは魔法の杖のみ。



お菓子を取りに店に行きたいが、友季にがっつりと捕まっているので、ここから動けない。



ということは、つまり――



「お菓子がないなら、イタズラするぞ」



友季の低い声が聞こえて――



「……やっ……」



舞の胸元に、友季がそっと口付けた。



「と、トモくん、待って!」



「待てない」



舞の腰に回されていた友季の右手が、舞の背中に移動する。



そこにあった衣装のファスナーが、ゆっくりと引き下ろされた。



「トモくん、お店でこんなこと……!」



「休憩室に監視カメラは置いてないから、大丈夫」



「そういう問題じゃ――あっ……」



友季の左手が舞の太ももを優しく撫でたので、その言葉が途中で途絶えた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る