第14話 すっかり変わったクラスでのポジション
それからの実技試験は俺の完全無双状態だった。
2位や3位につけてくる生徒はころころ変わっていく。
そんな中、俺はどの試験でも1位の座を譲らなかった。2日目の試験でも同じだ。もうほとんどのクラスメイトが1位を諦めているような状態になった。
俺に続いて上位を維持していたのはフロスト・ブリザード。
さすがといったところ。
ブレイズやルミナス、ゲイル、そして推薦入学者のヴィーナス・エレガントも負けじと上位にくらいつく。
だが結局、俺はすべての教科で最高成績を叩き出した。
***
「くぅー、ジャックの全力は気持ちーぜ! これまでずっとバカにされてきたからな。おれはお前の本当の実力を知ってたからこそ、ずっとモヤモヤしてたんだ」
テストが終わって結果が発表され、疲れ果てた生徒は寮に帰っていく。
その途中、ゲイルは清々しい笑顔だった。
「実力は出したが、例の秘密は守ってくれよ」
「オーマイガー、おれが秘密を守らないとでも? ちゃんとわかってるさ」
「何度か危なかっただろ」
「いやー、あれはうっかりってやつよ」
「そのうっかりが危険なんだ」
テストが終わったことで、どの生徒も気が緩んでいた。
俺だって昨日今日といい気分だし、明日からは実力者としての学園生活が始まる。
困ったことといえば、これでブレイズは絡んでこなくなるだろうと思っていたのに、むしろ今まで以上に絡んでくるようになったことだ。
俺のことを「ライバル」と呼んでいる。
「談話室にでも行くか」
ゲイルが言った。
談話室は生徒たちの間で1番人気の場所だ。
クラスごとにそれぞれ談話室があり、そこは男女共同スペースとなっている。
いつもエロス・ランドと数名の男子生徒が女子目当てにいる。
だが、今日は比較的人が少なかった。
たぶん疲れてもう寝てるか、大浴場で体を休めているのかのどちらかだろう。
「うゎ、ジャックくん! 談話室にいるなんて珍しいね!」
話しかけてきたのはリリーだ。
もふもふした動物の毛でできたパジャマを着ている。
うさぎみたいで、ついつい頭を撫でたくなるくらいに可愛い。リリーはいわゆる、うさぎ系女子ってことか。
「ゲイルが談話室に行こうって──」
「いや、おれそんなこと言った? じゃ、おれ、お先! もう疲れてさ。じゃーな!」
急にわざとらしくとぼけ、ゲイルは俺たちのふたり部屋に帰っていった。
「ゲイルくん、行っちゃったね……」
「うん」
なんだろう。
なんか気まずい。
ふたりきりではないが、他に話す人もいないので、ほぼふたりきり。
それに、俺は実力を解放したばかり。
クラスのみんなから今まで騙していたと思われていてもしかたがない。
「ジャックくんって、やっぱりすごいよね。昨日も今日も、ずっと1位だったもん」
「いや、それはたまたま──」
たまたまなのか?
どう考えても数日前まで無能と思われていたやつが、たまたま全教科のテストで1位を取った、なんて通用しないだろ。
どう説明すればいい? リリーはもう、俺の中で信頼できる親友なのか?
確かに彼女は悪い人じゃない。
というか、すごく純粋で、可愛くて、性格もいい女の子だ。
だが、そんな理由で簡単に秘密を打ち明けていいのか。3人にしか言うことはできない。もうゲイルに言っているので、残りふたり。
その中にリリーを入れてしまってもいいのか。
談話室のほんのり明るい照明。
アットホームな雰囲気。
「リリーね、ほんとは──」
「何話してるの?」
リリーが何か言おうとしたのを、急に現れたハローちゃんが遮った。
いや、どう考えてもいきなりすぎる。
さっきまではいなかったはずなのに、気づけばすぐ目の前にいた。
ハローちゃんのスキルか。
ハローちゃんは視界に入るところなら一瞬で瞬間移動することができる。
つまり、視界に入るぎりぎりまで移動するということを続ければ高速で遠くに移動することも可能だ。
羨ましいスキル。
残念ながら、俺はこういう攻撃系じゃないようなスキルには『適応』できない。欲しいと思ったスキルすべてを手に入れられるわけじゃない。
「ねえねえ、ジャックくんってすごかったよね。なんで今まで実力隠してたの? 今はどんな気分?」
「ハローちゃん、ジャックくんは今いっぱいいっぱいかもしれないんだよ! そんなに質問したら、頭ぱんぱんになっちゃう」
「なんでいっぱいいっぱいなの?」
「むぅー」
これは何だ?
美少女どうしの喧嘩か? ずいぶんと緩めの喧嘩だ。
俺がここにいることで、このふたりの仲が悪くなるのは見たくない。
「悪い、俺、もう部屋に戻る」
「あ、ちょっと、ジャックくん──」
リリーが呼び止めようとしたが、俺は談話室を出た。
あとは自分の部屋への階段を下りるだけ──。
「おい」
「ん?」
階段では別のやつが俺を待っていた。
あんまり絡んでほしくないと思う人物ナンバー2だ。ちなみに、1位は性格最悪のルミナス・グローリー。
「ちょっといいか?」
「ちょっとって、どこに──」
「いいからついてこいやおら!」
「……」
相変わらず、彼のコミュニケーション能力は大丈夫か?
誰にでもとりあえず怒鳴るのは嫌われるだろ。
いろいろ反論したかったが、階段はブレイズに完全に塞がれている。
俺は文句を言わず、ブレイズに従うことにした。
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