第13話 どんどん実力見せていこう
「素晴らしい魔術の数々であった。それぞれの持つスキルもうまく利用していたようだ。まだ1年生とは思えない。イヒヒ」
ブレイズは鼻から湯気が出ていた。
あまりに高温を出し過ぎたらそうなるんだろう。なかなか痛そうだ。
俺の炎のスキルを見ていたのはブレイズとスペクター先生だけだった。
しかたないことだ。
他の生徒たちに見られていなくてよかった。ただ、ブレイズが俺のスキルを怪しまないといいが。
「貴殿らの魔術はこれからも伸びていくことだろう。では、結果発表──上位3名の発表を行う。我から魅了の魔術をかけられたくてしかたないであろう? イヒヒ」
女子生徒の顔は本気だ。
特にマーリーンとリリーの顔。
ふたりの綺麗な顔は本気過ぎるあまりに歪んでしまっている。
「3番目に優秀な成績の生徒は、100点満点中の82点。予想通りなのかもしれない。減点するところというと、攻撃魔術の際の多少の荒さと、守備魔術の際の危険度である。イヒヒ」
「早く言え! 焦らすなおら!」
ブレイズは無礼だが、スペクター先生には何を言っても通じない。
「我は時間に厳しい人間を焦らすのが好きなのだ。イヒヒ」
「イヒヒイヒヒうるせぇんだよ! おめぇももとは人間だったんだろ!」
さすがにそれは言い過ぎだ。
先生に対して「おめぇ」呼び、「うるせぇ」はさすがに限度を超している。
そろそろスペクター先生も怒る──。
「そう、我も人間であった。長い話にはなるが、人間ブレイズよ、貴殿はその話が聞きたくて言ったのか?」
「なわけねーだろ! 熱が冷めるんだよ!」
「興味深い。冗談はこれくらいにして、早速発表しよう。3位の生徒はフロスト・ブリザードである」
またブリザードの名前が呼ばれた。
これで彼が本当の実力者であることははっきりする。フロストは吹雪を操るというスキル『雪』を持っていた。
前回と同じように、ブリザードは何も言わず、機嫌悪そうにしていた。
「ねえねえ、ジャックくん。ブリザードくんはいつも機嫌悪そうだよね。どうしてかな?」
それなりに大きな声で、クラスの光ハローちゃんが聞いてくる。
思ったことはなんでも口に出すタイプの人間だったか。好奇心旺盛ってところなんだろうが、この状況、俺が気まずい。
なんて答えればいい?
ブリザードも、というか、みんなが聞いている。
「それは……わからない」
正解かはわからないが、少なくとも大ごとにはなってない。
が、ブリザードは俺をまた睨んでいた。
俺は彼に嫌われているのかもしれない。何もしてないのに。理不尽なことに。
はぁ。
いつもそうだ。
何かがうまくいったかと思えば、誰かにいきなり嫌われている。
「ハローちゃん、今のはやばいって」
小声でゲイルが注意する。
意外と頼りになる男だ。
「なんで? ゲイルくんは気にならないの?」
「おれだって気になるけど、な? わかるじゃん。そこはうんって言ってくれよ。頼むぜ」
どう説明してもハローちゃんにはわからないらしい。
そういう性格ならしかたないのか。
「我は文句は許可していうが、私語を許可した記憶はない」
「あ、すみません。ちょっと口が勝手に動いたもんで」
「興味深い。イヒヒ」
なんだこの会話。
バカとバカの会話だろ。
この世界の住民が全体的に知能が低い、だなんて聞いてない。
「続いては2位の発表である。得点は86点。こちらも上級生並みの実力、人間ルミナス・グローリーである」
1位を取れなくて悔しそうではあったが、ルミナスの機嫌はよさそうだった。
「すごいね、ルミナスくん!」
ひとりの女子が言う。
「いやいや、僕はまだまだだよ。1位はもっとすごいからね。僕も見習って頑張りたいんだ」
「向上心があるんだね、ルミナスくんは」
きっとあの女子はルミナスが好きなんだろう。
目は完全にハートだ。
嫌な話だが、一応ルミナスはハンサムな生徒。
いくら性格がクズでも、それがバレなければ人気があるのはしかたない。実際、俺も騙されていたときは好意的に思っていたわけだから。
「1位はきっとブレイズくんかな。すごい炎のスキルを使ったと聞いたからね」
ルミナスがそう言って、さっとブレイズを見る。
ブレイズは違うとでも言うように首を振った。
そして俺を見る。
ルミナスの目に殺意が浮かんだのを、俺は見逃さなかった。
「なるほど。いや、誰が1位かはわからないよ」
「光のスキルをうまく利用した魔術には感心した。我の魔術のレパートリーにもぜひ加えたいものである。イヒヒ」
くだらなかったので静かになった。
「楽しんでくれているようで何よりである。興味深い。それでは1位の発表──素晴らしい威力の炎であった。我は人間があれほどまでの炎を扱うのを見たことがない。得点はひとりだけ抜けて97点」
「炎!? 97点!?」
「つまりそれはブレイズ!?」
「やっぱり1位はブレイズだったんだね」
クラスのほとんどがブレイズに注目している。
だが、本人は暗い顔で首を横に振るだけだ。
俺は例外として、このクラスで炎系のスキルを持つのはブレイズのみ。
つまり、俺のやったことを見ていなかった彼らは、炎ということはブレイズが1位──そう思っているわけだ。
「1位は人間ジャック・ストロングである」
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