第93話

内田とはゆづのことで直接何度か話しているし、お互いに気持ちの整理もついているはず。



だからいい加減、内田を敵視するのはもうやめよう――



「そういえば、梨乃ちゃんと本木くん、最近付き合い始めたんだよ」



「……へ」



俺の思考が、一瞬だけ停止した。



あの2人が付き合っている、となると――



付き合いたてのカップルを含む男女4人で行動する場合の構図なんて、一つしかない。



「……飯食う時とか、どうやって座ってんの?」



「え……」



「ゆづの隣と、向かいの席は誰が座るの?」



俺の言いたいことが分かったのか、ゆづは気まずそうに俺から目を逸らした。



「私の向かいの席が梨乃ちゃんで……隣は内田になることが最近ではほとんどかな」



「……」



前に俺の職場に来た時は4人テーブルの場合、ゆづの隣は絶対に梨乃ちゃんが座っていたのに。



「あの、でも……内田とは本当にただの友達というか……一緒に練習を頑張ってきた仲間だから」



「……うん、分かってるよ」



ゆづのことは、本当に信用している。



けど、それでも不安になるのは……単に俺が、ゆづのことを好きすぎるだけなんだろう。



「……卒業記念制作は、確かに内田に誘われたけど……でもそれは梨乃ちゃんとやるから」



「!」

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