第94話

実はゆづの通っている製菓の専門学校と俺の卒業した調理師専門学校は、同じグループが経営している学校だ。



だからゆづの言っている卒業記念制作は、俺も経験しているからよく知っている。



一人で参加することも可能だけど、殆どの生徒は2人1組で参加する。



2人で参加する場合は、より規模の大きい作品を制作出来るからだ。



最終的にはその作品に審査もされて、出来の素晴らしいものには金賞などの賞も与えられる。



そして、ゆづが作りたいのはおそらく――



「ウエディングケーキ作るの?」



「うん! イミテーションのだから、高さのある見た目も豪華なやつ!」



いつか作ってみたいと言っていたのを、俺ははっきりと覚えている。



だから、ゆづがその卒業制作を楽しみにしていることも知っている。



作品発表の翌日は校舎を開放して一般公開と一般投票の開催もされる。



俺が参加した時は……一般投票では一位になれたけど、先生たちからの技術的な評価は結構厳しくて銀賞にとどまった。



俺にとっては少し苦い思い出のある行事だけど、ゆづが参加するなら絶対に見に行くつもりだ。



ゆづの相方が内田ではないと知れて安心もしたし。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る