第86話

「……もっとして欲しい」



恥ずかしいのを堪えてそう答えた直後、今度は深く絡むキスを落とされた。



「んっ……!」



いつもなら、私の口内を掻き回しながら体にも触れてくるのに。



「……」



ナオくんは、本当に私に言われたことしかしないつもりらしい。



「な、ナオくん……」



「……何?」



「なんでそんな意地悪するの……?」



「……意地張って俺の言って欲しい言葉をなかなか言ってくれないゆづの方が、ずっと意地悪だと思うけど」



ぼそりと呟くように答えたナオくんは、私の体を優しく抱き締める。



「そろそろ俺の我慢が限界なんだけど、どうしてくれるの?」



どうする、と言われても……



「え、と……」



「俺は今すぐゆづを抱きたいんだけど、ゆづはどう?」



ナオくんの瞳には色っぽい熱がはらんでいて、



「え……」



そんな目に真っ直ぐに見つめられたら、



「わ、私も……ナオくんに抱いて欲しい」



私だって素直になるしかないじゃん。



「このまま抱いていい?」



「……うん」



結局は、ナオくんのしたいようにされてしまう。



「うぅ……」



それが悔しくて唸っていると、



「大好きだよ、ゆづ」



ナオくんはまたわたあめみたいな笑顔を浮かべて、私の服に手をかけた。

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