第83話
「……しょっぱい」
唇を離したナオくんが苦笑しながら、私の頬を伝う涙を指先で優しく拭ってくれた。
「本当はゆづのこと、泣かせたくないのに……実際は泣かせてばっかで、最低な彼氏でごめんな」
「……」
黙ったまま、ふるふると首を横に振ると、
「ゆづには、ちゃんとゆづのこと幸せにしてくれるヤツの方がいいんだろうなって思うこともあるけど」
ナオくんの腕が、また私をきつく抱き
「でも、ごめん……ゆづのこと、絶対に手放してやれない」
小刻みに震えているナオくんの腕が、私の心までをも締め付けるようで余計に苦しくなる。
「自分勝手な男で、ごめん」
「謝らないで……私は、ずっとナオくんと一緒にいたいもん」
ナオくんの背中に両腕を回して、ぎゅうっときつく抱き締め返した。
「ナオくんのことが好きすぎて勝手に辛くなってるだけだから」
「……本当に不思議なんだけど、こんな俺のどこがいいの?」
「え。前にナオくんにやめてって言われた話、またしてもいいの?」
ナオくんの魅力を語っていいのなら、永遠に喋り続ける覚悟はいつでも出来ている。
「……ごめん。やっぱいい」
語られたくない話でも思い出したのか、ナオくんはプイッとそっぽを向いた。
少しだけ見える頬が、赤く染まっていて凄く可愛い。
「ナオくんの赤いほっぺも可愛くて好きだよ」
「だから、やめてって」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます