第80話

本当はこれからゲームセンターに行こうとしていたのに、コインパーキングに停めておいたナオくんの車の中に戻ってきた。



2人きりの車内で、



「俺はゆづ一人だけに縛られたいって思ってるんだけど」



ナオくんは真剣そのものの眼差しで私を見つめる。



「ゆづって、全然俺のこと束縛しないよな?」



「……へっ?」



一瞬、質問の意味が分からなくて首を傾げた。



「ゆづにヤキモチとか焼かれてみたい」



そんなのはナオくん次第なので、



「……私の目の前で、他の女の子と親しげにしてたら簡単に妬くよ」



本当はそんなこと、して欲しくはないけれど。



「……フリでも、ゆづを不安にさせることはしたくない」



そう言って私の肩を優しく抱き寄せてくれるから――



「じゃあ、やっぱり妬けない」



「……」



唇を尖らせてムッと拗ねたナオくんは、



「とりあえず、今日はもう帰ろっか」



まだもう少しデートを楽しみたかったな……なんて言い出せない私を乗せて、車を発進させた。

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