ふわふわ、時々ずっしり

第79話

ナオくんの笑顔はふわふわ甘いわたあめみたいで、向けられる度に幸せな気持ちになる。



でも、ナオくんと付き合い始めてから、彼の新しい表情も発見するようになった。



「おにーさん、超タイプなんだけど! ちょっとだけでいいから、私と遊んでかない?」



ナオくんと繁華街をデート中、私と手を繋いで歩いているにもかかわらず、見ず知らずの女性にそんな声をかけられた。



こういうことって、実は物凄い頻度でよくある。



ナオくんのすぐ傍でそれを見ているのはもちろん嫌だし、とても辛いんだけど……



「あ? 彼女とデート中って見て分かんねぇ?」



急に表情も態度も豹変させたナオくんに、私は毎回ビビっている。



私には向けられたことのない表情なだけに、見かける度に怖いと思ってしまう。



不機嫌という言葉をまさに全力で表現しているその表情を見ても、



「おにーさんみたいなイケメンが、一人の女に縛られるなんて勿体ないって」



逆ナンをしてくる女の人って、そう簡単にはめげないみたい。



「……うざ」



盛大に舌打ちをしたナオくんは、



「行こう、ゆづ」



ムッとしたまま、私の手を強く引いて足早にその場を後にした。

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