第77話

「……俺って、ゆづを抱き締めるために生まれてきたのかな」



私と逆のことをぽつりと零したナオくんに――それでも、結局は同じ意味にしかならないその言葉に、



「ふふっ……」



私はナオくんに抱き締められたまま、小さく噴き出してしまった。



「え、なに?」



「えへへ……私も今、ナオくんとおんなじこと考えてたから」



「本当にぴったりなサイズ感だもんな」



ナオくんの身長は多分平均くらいで、私は平均よりも少しだけ小柄な方。



その差が、綺麗にすっぽり収まるポイントなのかもしれない。



「俺専用の抱き枕にしたい」



「え」



「『ゆづ検定』一級の合格祝いに、もらっていい?」



ナオくんの目が、玩具を目の前にした子供みたいにキラキラと輝き出す。



そんな表情をしているナオくんはとても魅力的だけど、



「一級を合格にした覚えはないし、抱き枕の件に関してはずっと前からそのつもりだったけど」



一級合格のルールなんて、ナオくんが一人で勝手に決めたものだし。



ナオくんに抱き締めてもらうのが好きな私は、理由や建前なんかなくてもずっと抱き締めていて欲しいし。

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