第73話

目の前と頭の中が真っ白になって、体が宙に浮いたような感覚が一気に押し寄せてきて、



「――っ!」



私は悲鳴に近い鳴き声を上げた。



その自分の声ですらも、何だか物凄く遠い世界から聞こえた気がした。



ついさっきイかされた時の余韻なのか、それとももう一度イってしまっただけなのか、私にはもう判断がつかない。



異常なまでに過敏になっているこの体が自分のものだなんて、全く信じられないくらい。



完全に力が抜けて動けなくなっている私の中で、



「ゆづ……!」



ナオくんが、いつもよりも少し激しい律動を開始した。



いつもならこういう時、私が落ち着くまで待ってくれるのに。



「いやぁっ……ナオくん、まだ動かないで!」



勝手に涙が溢れてきて、泣きながら懇願してるのに、



「ん……ごめん」



ナオくんの腰の動きは、止まるどころか段々と大きく速くなっていく。



「やめっ……壊れちゃう……!」



「ん。俺の腕の中でなら、乱れてくれていいよ」



優しいんだかそうでないんだか、もうナオくんがよく分からない。



「あ……だめっ……!」



意識が飛びそうになった瞬間、



「……」



ナオくんが突然、腰の動きを止めて私から体を離した。



「……え?」



達する直前に止められて、一気に不安と寂しさが込み上がってくる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る