第71話

「……逆上のぼせたかも。先に出るわ」



ナオくんは私の方を全く見ることもせずにそう言うと、一人でバスルームから出た。



その背中を見送りながら、



(はしたない子だと思われたかな……)



私は中途半端に火照らされた自分の体を両腕で抱き締めながら、思い切り落ち込んだ。



ナオくんが脱衣所を出ていったのを確認してから、私も浴室を出る。



タオルで体を拭いてパジャマを着てから、洗面台の棚に置かせてもらっている化粧水で肌のお手入れもした。



それからドライヤーで髪を乾かす。



もう後は寝るだけなので、ついでに歯も磨いて。



そうして準備を整えてから寝室に向かうと、



「ゆづ……俺、そろそろ限界なんだけど」



パジャマのズボンを穿いただけで上半身は裸のままのナオくんが、私の腕を掴んでベッドに引きずり込んだ。



「えっ?」



私の目を真っ直ぐに見下ろすナオくんの目には熱がこもっていて、



「さっきは我慢しなくていいって言ってくれたクセにこんなに待たせるなんて、焦らしすぎじゃねぇ?」



その表情は苦しそうに歪んでいて、また私の胸を締め付けた。



「今日はしないのかと思ってた」



「……ゴムなしではしないけど……寝室ここにはちゃんと用意してあるから」



ナオくんが、枕のすぐ横に置いてある箱を目線だけで指し示した。

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