第69話

「……気持ち良くない?」



「……」



ナオくんに触れられる場所は全部、本当に気が狂ってしまいそうなくらいに気持ちいい。



でも……指だけじゃ、全然満たされない。



――ナオくんが欲しいのに。



そう思ってナオくんを見つめているのに、



「ん? 何?」



私が何を言いたいのか分かっているはずなのに、ナオくんはとぼけたフリをする。



「……分からないフリするなら、一級合格あげないもん」



押し寄せてくる快感に耐えながらぼそりと呟くと、



「……本当は、俺だって今すぐにでも抱きたいけど」



私から指を引き抜いたナオくんが、またぎゅうっと強く抱き締めてきた。



腰の辺りにナオくんの反応した体が当たって、胸がぎゅっと締め付けられる。



「今、ゴムないから……」



「……」



今まで、ナオくんが避妊をしなかったことなんて一度もない。



けれど、数ヵ月後には私たちは夫婦になるのだから、今日くらいは――



「……なくても、いいよ」



ナオくんとなら、もしものことがあったとしても、絶対に後悔しない自信がある。



恥ずかしいのをこらえて勇気を振り絞って言ったのに、



「……」



ナオくんは黙ったまま。



でも苦しいくらいにぎゅっと抱き締められて、



――ゴクリ。



ナオくんの生唾を飲み込む音が微かに聞こえた。

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