第58話
目上の先輩に言うことではないけれど、もう我慢の限界だった。
これが、アレかな。
ナオくんが言ってたセクハラってやつ?
もしこのことをナオくんにグチったりでもしたら――
多分、
ナオくんの綺麗な手を汚させるわけにはいかないので、ここは自分で対処するしかない。
でも一体どうすれば……?
「うーん……」
さっきとは別の意味の唸り声を漏らしていると、
「サボり発見」
休憩室の入口ドアから、松野シェフが顔を覗かせて低い声を発した。
「げっ、シェフ……!」
焦る坂下さんに、
「お前……今サボってた分、次の休憩30分カットな」
シェフは無情にもそう告げて、
「今届いた原材料の片付けでもして来い」
厨房の方を指差した。
坂下さんは慌てて部屋を出て行って、それと入れ違いでシェフが私の目の前までやって来た。
「結月ちゃん。坂下のこと、
「あ、大丈夫です。絶対言いません」
言えばどうなるかなんて、想像に難くないから。
「あの、その代わりと言っちゃなんですけど」
丁度いいところに丁度いい人が来てくれたので、この際聞いてみよう。
「舞ちゃんから婚約指輪のお返しってもらったりしました?」
私が今一番知りたい答えを知ってるのは、舞ちゃんと松野シェフだけだから。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます