第51話
「……高校の卒業式が終わった後で女子からボタン下さいって言われる度に……ゆづも今頃は誰かに同じこと言ってるのかなって考えてた」
「え……?」
「あの時は、俺のを誰かにあげたいとかそういうのは考えてなかったけど……ゆづが誰かのをもらったりするのは嫌だなって思ってた……それがなんでなのかは、あの時は分からなかったけど」
じゃあ、もし私があの時ナオくんに下さいってお願い出来てたら……もらえてたのかな、なんて想像してしまう。
「……あれから4年も経ってるから、俺よりも知佳が持ってた期間の方が長いけど」
そう言うナオくんは、呆れたような、困ったような、何とも言えない笑顔を浮かべていて。
「しかも何か勝手にグッズみたいに改造されてるし。でも、そんなのでも良ければ……ゆづにあげる」
「……嬉しい」
ナオくんが私の手からそっと手を離して、私はボタンを胸の前で両手で握り締めた。
そんな私を、
「ゆづって、よく分かんねぇもんでもそうやって喜んでくれるよな」
ナオくんが優しく抱き締める。
「本当によく分かんないものだったら、きっと知佳ちゃんの商売は失敗してたと思うよ」
知佳ちゃんの着眼点とその行動力は、本当に凄いと思う。
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