第48話
「だから、ゆづちゃんにって」
知佳ちゃんの一言で、ナオくんがハッとしたように私を見る。
大事に大事に手のひらに乗せたボタンを見つめていた私は、その視線を感じて慌てて顔を上げた。
「ゆづは、そんなものが欲しいの?」
「えっ……」
ナオくんに真っ直ぐに見つめられて、ハッと我に返った私は、慌ててボタンをナオくんに差し出した。
「欲しくないって言ったら嘘になるけど……」
でも、このままこれを受け取るのは、何か違う気がする。
私が欲しいのは――ずっと憧れていたのは、そういうことじゃない。
「……」
ナオくんは難しそうな顔をしながら、黙って私からボタンを受け取った。
「まぁどうするかは、おにぃに任せるよ。とりあえず、ちゃんと返したからね」
知佳ちゃんは意味ありげに微笑むと、そのまま部屋を出ていった。
また2人きりにされた室内で、先程までとは違う気まずい空気が流れる。
「……舞も、さ」
突然ナオくんの口から出てきた舞ちゃんの名前に、私は反射的に体をびくっと震わせた。
「松野さんからもらったボタン、キーホルダーにして鍵に付けてるんだけど」
「……うん」
それは、私も見たことがあるからなんとなく知っている。
……正直、羨ましいってずっと思ってた。
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