第47話

「それ、おにぃの高校の時の第二ボタン」



――おにぃの高校の時の第二ボタン……



私は知佳ちゃんの言葉を頭の中で反芻はんすうして、



「えぇぇぇ!?」



「はぁぁぁ!?」



ナオくんと一緒に、驚きで声を上げた。



「なんでお前がそんなもん持ってんだよ! つーか、なんでストラップなんかにしてんだよ!?」



ごもっともな質問でまくし立てたナオくんに、



「え。おにぃの学ランのボタン全部外してストラップにして、欲しがってた在校生に売ったから」



知佳ちゃんは悪びれた様子もなくケロッと答えた。



「だっておにぃ、ボタン下さいって言ってきた子の告白、ことごとく断ってたから。余ってるならいっかなーって」



「……」



呆れて絶句するナオくんを前に、



「あ。予備のボタンは新しく買って学ランには付け直しといたから、あの学ラン自体はちゃんと近所の後輩に再利用されてたよ」



知佳ちゃんはやっぱり何も気にしていない。



「意外と高値で売れたから、予備ボタンの額以上は余裕で稼げたよ」



「お前……我が妹ながら最低クズだな」



「むむっ。流石に可哀想だと思って第二ボタンだけは残しといてあげたのに」



本気でムッとする知佳ちゃんに、



「そんなの今更どうしろってんだよ」



ナオくんは、くだらないとばかりに溜息をついた。

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