第38話
ゆづの実家に戻ると、
「直人くん! 結月を連れ戻してくれてありがとう!」
玄関先で、鼻を真っ赤にして目を潤ませたゆづのお父さんに激しく感謝された。
「え……?」
何か昔にも何度か見たことのある光景に、懐かしさすら覚える程で。
ゆづは小さい頃から、父親とケンカをするとすぐに家出をするクセがあった。
最初の頃は俺も一緒に探しに出掛けていたんだけど……
ゆづの行動パターンを知り尽くしている俺には、彼女の隠れている場所なんてすぐに見つけることが出来た。
それがそのうち、俺のいる所――つまり、俺が学校にいる時は学校に、自宅にいる時は家に押しかけてくるようになって。
俺自身がゆづの避難場所になっているということは周知の事実のはずなんだけど、何故か彼女の父親にだけは内緒にされていた。
それは、どうやら今も変わらないようで――
「どこを探しても見つからないし、本当に焦った。結月を見つけられるのは、直人くんだけだもんな」
本当は、彼以外は俺と一緒にいることは知っているから、皆に聞けば済みそうな話なんだけど。
俺の両親ですら、彼にゆづのことを訊ねられても、
「さぁ……お腹が空けば帰ってくるんじゃないですかねぇ?」
ととぼけている。
――本当は、インターホンを鳴らしたその家の扉の奥に潜んでいるのに。
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