第36話

俺の家族にも、彼女を連れて帰るということは伝えてあった。



だから知佳を含む俺の家族は、一体どんな子が来るのかと楽しみにしていたみたいだけど……



「ゆづちゃん、目を覚まして! 隣にいるの、うちのおにぃなんだよ!?」



「本当にいいの? こんなのと婚約なんかしちゃって」



「父親の俺が言うのもあれだが、結月ちゃん。考え直すなら今しかないぞ」



知佳、母さん、父さんの順で、何故か必死になってゆづを説得しようとしている。



うちに客間なんてそんないい部屋は準備されていないので、必然的にダイニングテーブルに座らされたゆづは、俺の家族に囲まれて困惑したような表情を浮かべている。



うちの家族は、昔からゆづのことをとても可愛がっていたから、何もゆづの存在を拒絶しているわけではない。



可愛いゆづの相手がこの俺だというのが、気に食わないだけだ。



……俺って、実の家族にまでクズだと思われてるのかな。



「あの……私、子供の頃からずっと直人さんのことが好きだったんです」



ゆづの口から初めて聞く“直人さん”の呼び方にドキッとする俺の前で、



「え……ゆづちゃん、趣味悪ぅ」



知佳が心底嫌そうな顔をした。

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