第35話

「ゆづ……」



どうすればいいのか分からなくて、とりあえずゆづを正面から抱き締めた。



田舎だから人通りは全然なくて、俺たちのことをジロジロ見てくる人がいないのがありがたい。



「ナオくんにあんな酷いこと言うなんて……」



ゆづは、まだぐすぐすと泣いたままで。



「俺は、ゆづが俺の気持ちを誤解せずにちゃんと理解してくれてれば、それだけで十分だよ」



ゆづの頭を優しく撫でると、



「あのクソオヤジにナオくんのこと誤解されると、私の気が済まないの!」



ゆづにキッと睨みつけられた。



彼女のその気持ちは凄く嬉しいけど、



「……ゆづ。言葉遣い」



やっぱり、彼女のご両親には俺のことをきちんと認めてもらいたいから。



今はまだ、このまま戻ってもきっと何も変わらないだろうし……



「……俺の家、来る?」



どこか、落ち着ける場所に移動したかった。



「あ……ナオくんのお家に渡すお菓子も家に置いてきちゃった」



またポロポロと泣き出すゆづ。



「そんなの気にしなくていいから。とりあえず行こ」



ゆづの実家から目と鼻の先にある俺の実家に、半ば無理矢理にゆづを引っ張り込んで――



丁度、玄関先のポストに郵便物を取りに出てきた妹の知佳ちかに出くわして、



「……は!? おにぃの彼女がゆづちゃんってどういうこと!?」



知佳に思いっ切り胸ぐらを掴まれる羽目になった。

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