第26話

女にプレゼントを贈ることに全く慣れていない俺なりに、一生懸命考えて選んだのに。



それを、何も知らない内田コイツにそんな風に言われる筋合いはない。



「負け犬の遠吠えってヤツ? 見苦しいよ、そういうの」



何も気にしていないフリをしながら言い返すと、



「……初めて本気で惚れた女に見向きもされなかった上に、他の男と仲いいとこ見せつけられてる俺の気持ちなんて、アンタに分かんの?」



少しだけ潤んで見える目に睨み返されて、



「……」



俺は思わず黙った。



3年前の自分を見ているみたいだと思った。



「泣くなよ。食後にティラミス奢ってやるから」



そう言って咄嗟とっさにおしぼりを差し出した俺から、



「泣いてねぇ!」



内田は怒鳴りながらも、そのおしぼりをひったくるようにして受け取った。



「アンタのそういう、イケメン特有の余裕綽々しゃくしゃくな態度が俺は大っ嫌いなんだよ」



「そんなに嫌いなら、わざわざこの店に飯食いに来ることねぇのに」



「仕方ねぇだろ! アンタのチーズリゾットの味が気に入っちゃったんだから!」



「えー、チーズリゾットと……あと何にします?」



腰のポケットに差していたメモ帳とペンでサラサラと注文を取る俺に、



「……スパイシーチキンってのと、シーザーサラダで」



内田はムスッとしながらも素直に答えた。



意外と可愛い部分もあるんだな。



――と思ったけど、本人には言わないでおく。

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