第25話

「え……何?」



店の扉の内側に立っている内田を、本来なら俺が“いらっしゃいませ”とか言いながら席に案内するはずなんだけど。



営業スマイルすらも瞬時にどっかにやってしまった俺は、不機嫌さ全開で内田にそう言い放っていた。



「客に向かっていきなりその態度? 接客向いてないんじゃない?」



内田の方も、ムッとしている。



まぁこの出迎え方じゃあ、そりゃ当然か。



「あ、お客様でしたかー。お一人様ですねー。こちらへどーぞー」



一人だと決めつけたのも、“一名様”ではなくえて“お一人様”と寂しく聞こえる言い方で強調したのも、勿論わざとだ。



「アンタ……感じの悪さと大人気おとなげの無さで右に出るヤツいないだろ」



案内されたカウンター席に腰を下ろしながら、内田は俺を鋭く睨みつけてくる。



「さぁ。何のことなのか、さっぱり」



天井の方を仰ぎならとぼける俺に、内田は諦めたように大きな溜息をついた。



「あんな露骨な指輪を森川に付けさせて……首輪つけて縛りつけるような真似して、満足?」



ゆづが婚約指輪というものに憧れを抱いていたのはずっと前から知っていたし、だからこそ、きちんとダイヤが綺麗に見えるデザインのものを選びたかった。



尚且つ、立て爪でも普段の生活の邪魔をしないデザインを選んだつもりだ。



結婚した後でも、結婚指輪と一緒にずっと付けていて欲しいと思ったから。

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