第21話

さて。



そうと決まれば今すぐベッドから出て準備をしなくてはならない。



よいしょっ……とナオくんの腕から抜け出そうとして、



「……?」



腕一本たりとも抜け出せなかった。



……あれ?



過去に抜け出した時は案外すんなり行けたのにな?



もう一度、ナオくんを起こさないように細心の注意を払いながらそっと抜け出そうとして――



「どこ行く気?」



すぐ耳元で、とてつもなく冷たい低い声が聞こえてきて、



「ひっ……!?」



上げかけた悲鳴を慌てて飲み込んだ。



「ねぇ、ゆづ。どこに行こうとしてたの?」



寝起きとは思えない腕力で抱きすくめられて、



「ナオくん……苦しいです」



私は呻くように訴えるしかなかった。



「ゆづが俺から逃げようとするからだろ」



不機嫌そうなその声に慌てて後ろを振り向くと、ナオくんはやっぱり物凄く不機嫌そうな顔をしていた。



「逃げないよ! ただ、花嫁修業で朝ごはん作ろうと思って」



「……花嫁修業」



オウム返しで呟いたナオくんは、腕の力を緩めると、



「え……何、その可愛い響き」



薄暗くて顔色までは分からないけれど、きっと真っ赤に染まっているんだろうなと想像出来るくらいに照れた表情を見せた。

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