第19話

てっきり、そういうことをするんだと思っていた私は、



「ナオくん……しなくていいの?」



咄嗟とっさに、自ら誘うような台詞を吐いていた。



「えっ? したい? 疲れてるだろうから嫌がると思ってたんだけど」



ナオくんの方がむしろ驚いたような声を上げた。



「え、あの……泊まりに来てって誘ってくれたから、てっきりするんだと思ってたんだけど……」



段々と恥ずかしくなってきて、声がしりつぼみになっていく。



「人間のストレスってさ、抱き締められると軽減するらしいって聞いて」



突然そんな話題を持ち出したナオくんは、私の体を更にぎゅっと抱き締める。



「疲れて帰ってきたゆづを癒してやれたらなぁって思って誘っただけだから、今日はするつもりないよ」



やっと暗闇に目が慣れてきて、カーテンの隙間から差す月明かりでナオくんの顔が見えるようになってきた。



その顔は、ふわりと優しく笑っていた。



「どう? 少しは癒された?」



そんなの、物凄く癒されたに決まっているけど、



「全然。もっと」



つい、そんなワガママを言ってしまった。



怒られるかな、と少しだけ思ったけど、



「仕方ねぇなぁ」



そう言って笑いながら私をぎゅうぎゅう抱き締めてくれるナオくんも、何だか嬉しそうに見える。



いつもとは少し種類の違う幸福感に満たされながら、私はゆっくりと夢の中へと意識を手放していった――

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