第20話
俺は一人帰る。
泣くなよ。何で泣いたんだよ。
何が嬉しい事を言ってくれるだ。
頼むから困らせるなよ。
せめて三十代前半なら…
こっちは五十代だぞ。
芸能人じゃないんだから。
異性に向けた言葉じゃないって、わかってるさ。
でもよ。
キラキラした目で言ってくるなよ。
なんとなく、お互いの心のスキマを感じ取ってる気がする。
このままじゃヤバイ。
俺がヤバい。
いや、違う。
スキマのピースを埋めるのは恋愛感情だけでないはずさ。
人生の先輩の言葉だって、埋まることもあるさ。
そうだ。そうだよ。
俺はその立ち位置なんだよ。
いつもは背景なのに、たまにボソッと言う設定のキャラ。
ヤベッ それってかっこよすぎで俺で無いだろ。
モブからランクアップしちゃってるだろ。
駄目だ。自分の落としどころを見極めろよ。
なんで、こんなこと考えてるんだ。
今までの人生は流されてたのに
なんで、こんなに考えてるんだ。
あぁ、無関心だったんだ…
腑に落ちたわ。
そうだよな。
交わらなければ、考えなくて済むもんな。
ドラマって、出会ってなんぼだよな。
二十代にときめく五十代の佐藤物語。
いきなりダブル主演の主人公か…
需要ないから!
主人公なんて無理だから。
眺めてなんぼのモブ人生しか送ってきてないんだって。
ブツブツ考えてたら家に着いた。
風呂入って切り替えよう。
風呂上がりの発泡酒を飲む。
ビール美味かったな。
相場さんと一緒だったからかな。
間違えるな俺。
ビールだったからだぞ。
そうそう。発泡酒でも飲める幸せ。
これぞモブライフ。
マンガ読まないと。
マンガって言ってるけど、これもドラマだよな。
教えられることもあるし
自分に刺さる言葉も出てくるし。
子供の時に買えなかった。
買ってもらえなかったものを大人になって
まとめ買いする気持ちがわかったわ。
俺もお気に入り見つけて本棚に並べたくなったもん。
心に刺さる作品を並べたら、もうバイブルじゃん。
俺の人生の手引書。
ワクワクして来た。
いいねぇ。
モブ、無趣味から脱却するの巻。
タイトルが昭和だよ。
いいんだよ。
昭和の教育をたっぷり受けたんだからしょうがないのさ。
沁みついてるんだよ。
でも、今更だけど俺の心は動き出したんだよ。
それを祝って発泡酒で一人乾杯だ。
新しい俺に乾杯。
気持ちいい。
そのまま寝ればいいのに、rioのサイトに
「遅くなってごめんなさい。
ちょっと泣いちゃって。
お化粧直ししてたの。
大丈夫。悲しくて泣いたんじゃないの。
お兄さんたち心配してくれてありがとう。
うれし涙だったの。
お兄さんたちと同じでrioの欲しい言葉をもらったんだ。
なんでわかるんだろうね。
rioってそんなにわかりやすいのかな。
あはは わかりやすいんだ。
それだけお兄さんがrioを見てくれてるからだよ。
いっぱい励ましてくれて
いっぱい元気をもらったから、rioも素直になれたんだよ。
きっとね。
rioもお兄さんたちのことわかるもん。
早くrioのエッチなことしてるの見たいんでしょ。
そうだよ。バレてるよ。うふふ
rioだって成長するんだからね」
そうだね。成長してるね。
モニターに向かってしゃべる。
君の魅力に翻弄されてる人もいると思うよ。
でも、俺はエッチに成長していく姿を見てるのが辛いよ。
でも気になるんだ。
しょうもないおっさんだよ。
こんなおっさんを肯定してくれるマンガないかな。
無いよな…
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