第14話

新しい職場に慣れるのには時間がかかった。


早番勤務の時には、なんとかかんとかついていこうとしたが

遅番の若者チームのアグレッシブさには

早々に白旗をあげた。


体力と処理能力の違いをまざまざと感じた。

それでも皆気持ちのいい人たちで話しかけてくれる。


その中でも、少し引っ込み思案な感じの

若い女性と話す機会が多かった。


その娘は相場 凛音という二十歳のアルバイトさん。

大学生で社会勉強でバイトを始めたらしい。


前向きな若い人を見るとおっさんには眩しすぎる。

彼らは主人公になれる未来がある。


モブおっさんなりに話していると

普段接することがない世代だけに新鮮に感じる。

なんせわからない単語だらけの会話なのだ。


それはどうゆう意味と聞くことはできる。

でも多すぎて話が中断され続けるのだ。

これはいただけない。


ただ皆を眺めるだけのモブの中のモブで過ごした。

そんな日々を何日か過ごした。


家に帰り、いつも通りに過ごしパソコンを開く。


おぉ、rioがいたっ

一週間ぶりだろうか。

女の子の日だったのだろうか。


「こんばんは。お久しぶりです。

皆さんは元気でしたか。

rioはお腹痛いよ~ってなってました。

久しぶりなので、少し緊張してます」


この声…


聞いたことあるような気がする。


似てるだけだよ。


そうそう。他人の空似ってやつ。


気になってしょうがない。


まるで間違い探しをするように、モニターを見入った。


うん。確証はない。


それでいい。


もし、そうなら。


リアルで会えるなら。


話をしてみたい。


でも、チャットは秘密でやってる事だろうし。


応援してますって言っても。


最悪、脅されるって思うかもな。


五十過ぎたおっさんに、貴女を見つけて

世界が動き出したんです。

って言って感謝してもキモイだけだ。


考えるのをやめろ。


チャットレディに惹かれたんだ。


リアルじゃないんだぞ。


皆いろんな顔を持って生きてるんだ。


それが普通なんだ。


あの場所だから挑戦できたのだったら

俺が突っついて挑戦の場を閉ざすことになるかもしれなんだぞ。


モブはそんなことはしない。

気づかないのがモブだ。


コインを買って応援コメントするのを

楽しみにしてたままでいいんだよ。


それさえできてない状況で、リアルで何ができるって言うんだ。


発泡酒飲んで忘れろ。


そして寝るんだ。


俺にドラマは起こらない。


仕事のことで手いっぱいなんだ。


優先事項を見誤ったら駄目だぞ。


いつのまにかrioのチャットルームが終わっってた。


俺は発泡酒を飲んで寝た。


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