第13話
さあ、出勤だ。
目指す店舗は駅近くのショッピングモール内にある。
従業員用入口で名前を告げ、店長の石原さんを呼んでもらう。迎えに来てくれたのは小柄な女性だった。ごく普通の挨拶を交わして、スタッフルームへ案内される。
業務説明を受けていても、気配りと聡明さを感じられる女性だった。
まずは、この女性視点での店舗運営に慣れないといけない。新天地で自分のやることが思い浮かんだのは、もう受動的な人生から一歩踏み出せたからだろう。とても簡単な思い付きではあったが。
店舗内と作業中のスタッフさんを紹介してもらった。皆、清潔感と明るさを感じさせる人たちだった。流されて生きてきた自分と比べて、少し恥ずかしくなる。
今日は雑誌の陳列の乱れをチェックすることや、補充をメインに雰囲気を掴んでほしいと言われた。営業時間に入りお客様を見ると、様々な年代の方が来店された。スタッフさん達もアットホームな感じに見受けられる。このモブに親しみやすさが表現できるだろうか。
売り場なので、商品知識も求められる。今日の持ち場の雑誌コーナーでさえ、自分の子供時代に比べればそのタイトル数自体倍ではきかない。細分化されているのだろう。店舗に置けるスペースにも限りがある。そのため取り寄せに対応できるよう扱ってないタイトルの把握も必要とされる。
新しいことを覚えるのは、脳が老化に向かってる自分には大変だ。一人で店舗を運営するわけではないので、ゆっくり慣れ、覚えてほしいと言われてるのが幸いだ。
そうこうしてるうちに遅番スタッフさんが出勤してきて紹介された。早番は落ちついた年齢に見える人が多かったが、遅番は若めの人が多かった。自分の子供世代だろう。午後も過ぎ、子供連れのお客様が多くなった。この店舗は絵本コーナーが充実していた。絵本を目当てのお客様が多かったのだ。絵本やコミックのコーナーからワクワクした感じの声が聞こえてきて微笑ましくなる。
初日の仕事を終えて思ったのは、求められていることは多いが(自分の商品知識が薄いせいで)雰囲気が好きだ。だった。
せっかくモールで働いているのだからと、少し散策する。夕飯はフードコートでラーメンを食べた。スーパーも見てみた。この状況は独身にはありがたい。
家に着く。着替えて発泡酒片手にパソコンを開く。
今日もrioに会えなかった。少し心配になる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます